雨のルアン・プラバン

ビザの滞在期限が切れるため、初めてのラオスに行ってきました。シェムリアップから1時間ちょっとで着きます。

ところが、出発の前日から風邪をひいてしまい、到着早々寝込んでしまうハメとなり、まあよくあることなので、ままよとばかりにゲストハウスでぼんやりとした日々をまる3日過ごしました。

その上にこの間、ずっと雨が降り続いていたのです。カンボジアも雨季で毎日降りますが、だいたい午後か夜、2回ほどの豪快なスコールがザーッと来ます。それでもどこかで雨宿りをすれば、特に1日の予定がこなせない、ということもないのですが、ここルアン・プラバンは、シトシトと、まるで“日本のような”雨が降りました。



風邪気味ではありましたが、さして熱が出るわけでもなく、ときどき近所をブラブラしていました。泊まっていたゲストハウスのちょうど目の前に大きなお寺があって、午前4時頃になるとガンガンと鐘が鳴り、修行が始まります。読経の声もかすかに聞こえてきます。そして1時間半ほどたつと、寺から僧たちが出てきて、托鉢が始まるのです。



ルアン・プラバンは、街全体が世界遺産に指定されています。高層建築は禁止され、ラオスの伝統建築と、フランス統治時代の西欧建築が混然とかつバランス良く保存されていて、とても美しい街です。そしてその街並みを縫って、夜明けと共に、オレンジ色の衣を纏った僧侶たちの列が、ひたひたひたと通り過ぎてゆく光景が、どうやらこの地の“名物”になっているようです

で、僧たちにいったい何をあげているのか?ものすごい人数だし、毎日のことなので、きっとお金ではないだろうとちょっと覗いてみたら、それは炊いたご飯でした。ただし、私たちがフツー口にするうるち米ではなく、もち米です。もち米は炊けば少し固まるので、それを少しづつちぎって僧が持つ壺のような入れ物の中に入れていたのです。ですから、托鉢が終わるころには、ちょうど1日分のご飯が集められるということなんでしょう。ちなみに、普通の食堂に入って注文しても、もち米が出てくるところもありました。どうやらラオスでは、ご飯といえば、もち米の方が一般的なのかもしれません。カンボジアの托鉢では、私が見る限りでは、お金をあげていました。

ところで、ベトナム、カンボジア、ラオスの3国を見て来てわけですが、日本人と一番よく似ているのはどの国の人たちかというと、どうやらラオスではないかという気がします。顔つきや雰囲気も一番似ていますが、やはり雨の降り方ひとつとっても、とてもよく似ているし、私が一番そう思うのは、実は靴を脱ぐ、という文化なのです。

ベトナムもカンボジアも脱ぎます。カンボジアの民家は、どこも玄関のところで靴を脱ぎます。2階に上がる外階段があったら、その階段を上がる前で脱ぎます。もちろん寺の本堂に入るところでは、必ず脱ぎます。しかし、ベトナムもカンボジアも、私が普通に泊まるような安ホテル、ゲストハウスの類でも、フツウは部屋には靴を履いたまま入ります。掃除に入る女性たちは、みな靴を脱いで入って、雑巾がけをしてくれますが、お客さんにそれを要請するところはないようです。

ところがラオスは、徹底的に脱がされます。日本と同じで、ホテルの入り口を入るところ、ないしは、2階に上がる階段の前で。例えば道路端に面したちょっとした商店などでも脱がされます。というか、入り口のところに靴やスリッパが脱いであるので、ああそうかなと思って脱ぎます。小さなスーパーに入る時も脱がされたのでびっくりしたことがあります。外国人とわかると、ああそのままでいいですよ、とかいわれますが、私たち日本人は慣れているので気になりません。でも西欧人などはどうなんでしょう?さすがにレストラン、カフェはそのままのようでした。お客さんは外国人観光客だけですから。Guest Houseではなく、Hotelと名が付くところでは、靴のままだと思います。

この靴を脱ぐという文化。これは騎馬民族系にはないわけで、もちろん中国にもありません。これがアジアのどの地域にまで広がっているのか、アジア以外には見られないのか、それを調べてみるのを今後の課題といたしましょう。雨のルアン・プラバンから妙なところに来てしまいましたが。