プノン・クロム

しばらく前に日本からやってきた友人が“置き土産”していってくれた本を、最近読み始めたのですが、それは、石澤良昭著『アンコール・王たちの物語』という本です。そのしょっぱなから、驚きの連続で、自分の無知さ加減にあきれました。

アンコール王朝の創建を伝える碑文によると、紀元770年頃に若い王子(後のジャヤヴァルマンⅡ)がジャワ方面から攻め上って当時のカンボジア諸城市を征服して、802年にプノン・クロムの頂上で王として即位したというのです。このプノン・クロムというのは、おそらくは、私が10月19日付けでアップした「Krom mountain」のことのはずで、さっそくアッシー君を呼び出して今日、行ってきました。(プノン=丘)

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シェムリアップ川に沿って63号線をひたすらバイクで南下すること30分ほど。標高137mのプノン・クロムが右手に見えてきます。この道をそのまま進むと、トンレサップ湖に出ます。

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先回もご紹介しましたが、丘の中腹から水上生活を営む人々の村が目の下に広がります。住んでいるのは、ほとんどベトナム人だそうです。

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頂上から見た景色。水位のピークはすでに過ぎているそうで、この先徐々に水位が下がり、緑の畑に変わってゆきます。上方の森の向こう側は、東南アジア最大の湖、トンレサップ湖です。

つまり、上記の本によると、プノン・クロムを須弥山、シェムリアップ川をガンジスに見立てて、大扇状地に農耕地を開墾していったという、地理的選択の成功が、アンコール王朝の発展を支えたというのです。

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丘の頂上にこの遺跡はあります。実は先回行った時もものすごく気にはなったのですが、説明書きなどいっさいなし、管理する人もおらず、ガイドブックを見ても、ネット上を探しても何もみつかりませんでした。ただ、こういう古い遺跡は言ってみれば、あちこちに溢れかえっていて、けっきょく今回の本を読んで、そんなに“由緒”あるものだったのかとびっくりしたのです。アンコール王朝の栄えある創始者といわれるジャヤヴァルマンⅡは、ほんとうにここで暮らしたことがあったのでしょうか?

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私たちがいた間には、一組のヨーロッパ系の観光客と出会っただけで、訪れる人もないほんとうに静かな遺跡でした。

無造作に放置されている神像を誰が彫ったのか?テラコッタのレンガをひとつひとつ積み上げたのはどういう人たちだったのか?何十トンもある巨石をどうやってあの位置まで運び上げたのか?などなど、素朴な疑問は尽きませんが、ひんやりとした古代の祠堂の陰で、私たちはしごくのんびりとした時間を過ごすことができました。